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弁理士試験の難易度は高くない!合格率や勉強時間を含めて徹底解説

弁理士試験の概要とは?(合格率など

毎年1回行われる弁理士試験に合格し、かつ、弁理士登録することが必要です。

本記事では、弁理士登録前の、弁理士試験やその合格の為の勉強時間などについてフォーカスした記事とします。

 

受験資格は学歴、年齢、国籍などによる制限は一切ありません。

例年、弁理士試験の日程は5月に1次試験とされる「短答式試験」に合格した場合、7月に2次試験とされる「論文式試験」に合格後、10月に3次試験とされる「口述式試験」が行われます。

 

また、現在、大卒者以外は受験が必要であった予備試験は廃止され、選択科目は41科目の中から3科目を選択する形式が、7科目の中から1科目を選択する形式に変更されました。

そして、選択科目には免除対象者も多いです。昔は合格率が3%程度であったのに対して、近年合格率が約8%で推移しているのは、)選択科目の免除も要因と言えるでしょう。

 

参考までに、平成29年度の弁理士試験では、合格者の最年少は20歳で、最年長は71歳でした(合格者の男女比は男性72.9%、女性27.1%)。

志願者数4,352人、受験者数3,912人に対し、合格者数は255人で合格率は6.5%です。

 

弁理士とは、一般的に弁護士を始めとする「士業」と呼ばれる専門職の一種です。弁理士試験は、特許庁が主管となります。

令和2年の新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言発動時には試験の延期が発表されたことから、必ず、「特許庁」の情報を確認することが必須です。

試験が近くなるとSNS上で様々な情報が氾濫します。

中には有益な情報もありますが、いわゆる「デマ情報」が拡散されることがあり、確証を得るまでに貴重な時間を消失してしまうリスクがあります。

特に試験日近くにこのリスクを被った場合、その損害は甚大と言わざるを得ません。

弁理士試験難易度

まず、どのような試験にも共通して言えることですが、合格率は必要以上に真に受ける必要はありません。

弁理士試験の概要でお気づきの方もおられるかと察しますが、まず、平成29年の志願者数と実際の受験者数にも300人以上も乖離があることです。

また、単なる「記念受験生」が混在していることが挙げられるでしょう。

記念受験生とは、勉強開始が遅く、雰囲気を掴むためにとりあえず受験する(本命は来年)ことや、そもそも仕事などの理由で試験範囲の勉強すら着手できていない層です。このような受験層も合格率算出時には、画一的に集計されてしまいますので、形式的な合格率は低くなるのは至極当然でしょう。

 

そして、試験の難易度としては、最初の関門である「短答式試験」との向き合い方です。

最近の合格率は10%程度と低くなっており、多くの受験生の壁となっています。

このため、多くの受験生が、最大の関門である「論文式試験」にたどり着く前に試験から撤退してしまうのが現状です。

 

短答式試験の試験時間は3時間30分で、問題は60問出題されます。

出題方式はマークシート方式(5肢択一式)です。

マークシートであれば簡単と言う訳ではなく、「以下の文章で正しいものはいくつあるか?」との出題もあり、ゆえに全ての選択肢の正誤判断が試される問題も複数問、出題されるということです。

また、一つの選択肢の文章も長文であり、文章の中にも紛らわしいダミーの文言が散りばめられており、広範囲かつ正確な知識の蓄積が求められます。

 

そして、肝心の合格基準は、満点に対し、65%の得点を基準として、かつ、工業所有権審議会が相当と認めた得点以上を取ることが短答式試験の合格基準です。

また、総合点による判定に加えて、1科目でも合格基準(各科目の満点の40%を原則)を下回った場合は不合格となる点はおさえておきましょう。

 

次に論文式試験を考察しましょう。

事実上の弁理士試験、最大の山場と言えるでしょう。

試験内容は必須科目と選択科目に分かれており、必須科目は、「特許・実用新案法、意匠法、商標法」の3科目です。

試験時間は特許・実用新案法のみ2時間で、その他の科目は1時間30分です。

配点比率については、特許・実用新案法のみ他の科目の2倍の配点を与えられている点は重要でしょう(特許・実用新案法:意匠法:商標法:選択科目=2:1:1:1)。

 

なお、論文式試験では、弁理士試験用法文の貸与がされます。

必須科目の試験の際と、選択科目の「法律(弁理士の業務に関する法律)」すなわち「民法」の試験の際に法文集が貸与されます。

 

「貸与されるのであれば楽ではないか?」との意見もあると考えます。

しかし、どの条文がどの辺りに記載されているかの把握は論文式試験突破には欠かせない能力です。

これは、日頃から意識しておくべきと言えるでしょう。

 

そして、合格基準は、標準偏差による調整後の各科目の得点の平均(配点比率を勘案して計算)が54点を基準として口述式試験を適正に行う視点から工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であることとされています。

ただし、47点未満の得点の科目が1つでもあると不合格となります。

尚、選択科目の合格基準は、科目の得点(素点)が満点の60%以上であることです。

 

最後に控える口述式試験を考察しましょう。

試験官3名の前で、口頭で問題を出され、答えていく面接方式の試験です。

特許・実用新案法、意匠法、商標法の3科目について、それぞれ10分程度の面接時間です。試験時は、予め用意されている弁理士試験用法文を用いることができますが、これに依存しすぎるのは得策ではありません。

 

合格基準はC評価が2つ以上ないことが合格基準となります。口述式試験の合格率は3つの試験の中で突出して高い、90%超ですが、短答式試験と論文式試験を突破してきた人でも10%は不合格となる点は無視できないでしょう。よって、模試を利用し、対策しておくことが適切です。

弁理士試験勉強時間

勉強時間は3,000時間と記載されているサイトもありますが、正しい勉強法で、勉強する範囲を試験合格に必要な範囲に絞れば、1,500時間で合格可能です。

当然、全ての科目について100%の知識を習得することは不可能と言えるでしょう。

誰が受験しても必ず、得手不得手の科目が存在します。

しかし、大事な点はそこではなく、「試験合格に必要な部分」を「試験日当日」に「合格に必要な水準」に持っていくことです。

よって、実務に必要な部分は合格後に勉強するべきです。

これには反論もあるでしょう。

「受験期間中から実務で必要な知識を習得しておくことにより実務でも即戦力として重宝されるのではないか?」との意見もあろうかと考えます。

 

しかし、重要なのは、まず、試験に合格することです。

どんなに実務で使える知識が蓄えられていても「受験生」のままでは、「弁理士として社会的な信用はない」と言わざるを得ないでしょう。

 

そして、受験生の最も陥りやすい点として、「勉強時間数」にフォーカスしてしまうことです。

あくまで勉強時間は一つの指標に過ぎません。

誤った勉強法で時間数を重ねても合格が確約されているとは言えません。

弁理士試験の長期受験生が陥りがちな誤りとして、「手段の目的化現象」が挙げられます。

これは、例えば「何千時間勉強する」と、目標を立て、勉強時間の達成を第一の目標に掲げてしまうことです。

もちろん一定以上の勉強時間は必要ですが、目標はあくまで弁理士試験の合格であり、勉強時間を消化することではありません。

また、「消化」と明記したのは、このような目標を掲げてしまうと知識を積み上げることよりも、むしろ時間が積み上がることに達成感を覚える傾向があるためです。

当然、目標が適切とは言い難いために、合格レベルに到達することは難しくなると言えるでしょう。

弁理士試験勉強法(努力の方向性)

弁理士試験の短期合格のカギとして、効率的な勉強法を知り、「工夫」を交えながら「継続」していくことが重要です。

 

弁理士試験の受験生からの多くの質問で、「合格のための特別な勉強法はありますか?」という質問があります。一足飛びで合格する魔法の勉強法というのはありませんが、短期合格をする効率的な勉強法というのがあります。。

受験生の多くを占める世代が30代です(平成28年度52.4%、29年度46.7%、30年度47.7%)。

 

上記のとおり、社会人層が多くを占めます。

一部は専業受験生もいるとは言え、養う家族もいることから働きながらの受験を余儀なくされる人が多いと言えるでしょう。

そうなると、仕事と家庭を両立しながらの受験勉強とならざるを得ません。

また、共働きともなると、配偶者の協力を得られとしても全てを依存することは現実的ではないでしょう。

朝型、夜型も自身のクロノタイプにより画一的に考えることは得策ではありません。

よって、どの時間にアウトプット(又はインプット)が向いているかを見極めていくことが肝要です。そこで自身にあった勉強法が確立したら、その勉強法を粛々と継続していくことが合格するために必須です。

弁理士試験勉強法(修正する勇気)

また、一旦決定したスケジュールでも弁理士試験は検定試験と異なり、一定の長期戦となることは否定できません。

よって、仕事や家庭の変化に応じて柔軟な対応をすることが適切でしょう。

よって、通勤電車内の時間帯は短時間でできる条文暗記や短答の過去問に取り組み、比較的邪魔が入らない仕事が始まる前の時間や仕事の後の時間に論文の答案構成に取り組むなど大枠は作成しつつ、急な対応が必要となった場合は、柔軟に時間のやりくりをするのが望ましいでしょう。

 

弁理士試験受験生は真面目な方が多く、それがマイナスに作用することがあるのも現実です。

一旦自身で確率した勉強法を粛々と継続している場合、明らかに成果が出ていないにも関わらず、「今更変えるのか?」という不安に苛まれることがあります。

しかし、多くの場合、気づいてはいるももの、人間は無意識下や不安な時には習慣に支配されるものです。よって、従前の勉強法をやり続けてしまうのです。

 

ここで持つべき視点として、「工夫は撤退ではなく前進」ということです。「変化や工夫」というと「そのまま辞めてしまうのではないか?」との不安が頭をよぎることと察します。しかし、変化することですら危惧するほど、継続できてきた人が中途半端なところでタスキが途切れるほど、継続の力は弱くありません。

弁理士試験の改正

平成28年に弁理士試験は改正が行われました。

短答式試験には科目合格基準が導入され、論文式試験(選択科目)には選択問題の集約が行われました。

 

短答式試験改正の詳細は以下のとおりです。

特許・実用新案に関する法令、意匠に関する法令、商標に関する法令の3つに分けて実施されています。以前は、科目別の得点は問わず、総合点のみでの合否判定でした。

これが、平成28年度からは、試験科目別に合格基準(40%程度)が導入されています。

よって、総合点による判定に加えて1科目でも合格基準を下回ると不合格ということです。

 

最後に、弁理士試験は、1度での合格が困難でも一定期間勉強に励めば合格できます。

弁理士の人数も年々増えていますが、これは、複数年かけてチャレンジし続けて合格を勝ち取った人たちが報われた結果とも言えるでしょう。

 

弁理士試験は計画を立て、その計画を修正しながら継続していくことが結果的に合格への一番の早道となります。

また、周囲の声は峻別する意識も大切です。中には、「そこまで勉強する意味があるのか?」、「家族を犠牲にするだけの価値があるのか?」など、心無い言葉を受けることもあるでしょう。

第三者から降ってくる言葉は選択の余地はありませんが、降ってきた言葉の解釈の仕方は選択の余地があります。

受験生活中には、耳に入れる価値すらない言葉もあるでしょう。

そのような時は、「短答式試験の練習である」と、置き換え、単なる足を引っ張る(不合格にするための)ダミーの選択肢であると「言葉の意味」を置き換えましょう。

そして、最後まで正しい努力をし、合格した先には、あなたを必要としてくれる人達が大勢待っています。

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