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理系に行政書士資格より弁理士資格をおすすめする理由を徹底解説

行政書士は行政手続を専門とする法律家です。行政書士が独占する業務と、他の資格で

独占されていないものも仕事とすることができるため、幅広い業務となります。

弁理士は、技術や発明の権利、知的財産を守るための仕事をしています。どちらも重要な

責任を担う仕事ですが、その業務内容は大きく異なるため資格を取得する上での勉強の

方向性も大きく異なります。

その割合を見ると、行政書士には文系出身の人が多く弁理士には、理系出身の人が多く

見受けられます。

当記事では、なぜ理系に弁理士がおすすめなのかを業務内容や年収資格試験などを通して

解説していきます。行政書士と弁理士のどちらかで、迷っている理系の方はそれぞれの違いを

見て参考にしてみてください。

行政書士と弁理士の資格難易度の違い

行政書士試験と弁理士試験は、どちらの試験も受験資格は設けておらず、年齢、国籍、学歴に問わず誰しもが受けることのできる試験です。

行政書士の試験は、年に1度受けることが可能で試験時間は3時間を要します。

行政書士の試験内容は下記の科目から出題されます。(令和元年度実績)

(1)行政書士の業務に関する必要な法令(46問)

・基礎法学:2問

・憲法:5問

・行政法:19問

・民法:9問

・商法、社会法:5問

(2)一般知識(14問)

・政治、経済、社会:7問

・情報通信、個人情報保護:4問

・文章理解:3問

上記の計60問を見ると、法律に基づく科目が目立ちます。

先にも、行政書士の試験を受ける人たちに文系出身者が多いことを上げましたがその理由は、行政書士試験の試験科目にあるでしょう。

上記の科目を見ても明らかであるように、行政書士の試験をうける人の大半は経済学部や

法学部出身で、学生時代に学んできたことの多くが反映されていることがわかります。

また、行政書士の試験合格者は、30代に次いで20代が多く、年齢が上がっていくと共に

合格率が下がってしまう傾向にあるので、学生時代に学んだ基礎を忘れないうちに行政書士の試験に挑戦する人が多いです。

行政書士の試験に比べて弁理士の試験は、特許や知的財産に関する分野に絞って

勉強することができるので、仕事をしながら独学でも問題なく学ぶことが可能です。

論文試験で出題される事例問題は分析力を求められますが、理系出身の人からすれば

分析は基本的な考え方の一つですから、分析力を合格基準点まで鍛え上げることができれば

一発で合格することも可能です。

実際に、合格者の平均年齢が37歳であることから、たくさんの人が仕事をしながら

資格取得を目指していることがわかります。

このように、試験だけを見ても行政書士と弁理士では大きく異なっています。

行政書士と弁理士の合格率

2019年度は、行政書士の試験を受けた人は39821名、合格者は4571名で合格率は

11.5%でした。毎年、10%~13%の合格率となります。年齢別で合格率を見てみると

40代が26.9%と最も多く、次いで30代では26.6%となっています。

50歳以上になると合格率が18.5%です。

過去、3年のデータと、2019年の合格率を比較したところ、40代の合格率が高いことは

珍しく、通常であれば、30代が最も多くの合格率を誇り、若干の差で20代の合格率が

高いです。

弁理士の試験の場合は、特許庁の発表しているデータによると、2019年に弁理士の試験を受けた人は3488名、合格者は284名で、合格率は8.1%でした。

過去のデータから比較すると、受験者は年々減少傾向にありますが、合格者はほぼ横ばいで

毎年、7%~8%をいったりきたりしている状態です。

年齢別で合格率を見てみると30代が47%と最も多く、次いで40代が26%と

なっています。

職業別では、会社員が50%となり、合格者の半分を占めています。

合格者のほとんどが数回の挑戦で合格していますが、1回の挑戦で合格する人は

10%以上います。

そして、理系出身者の合格率は78.2%でした。この合格率は、いかに弁理士の試験が

理系出身者にとって有利な資格であるかわかる数値です。

理系大学の出身者の中には、卒業研究や、理系の大学院在学中に行う研究にて特許を

出願することもあります。

特許を申請するまでに数々の工程を踏むため、理系出身者には特許や知的財産に関する

基本的な知識が備わっていることがわかります。

また、弁理士試験の選択科目試験の内容は下記の科目から出題され、いずれか1つを選んで

試験に臨みます。

(1)理工Ⅰ(機械・応用力学):材料力学、流体力学、熱力学、土質工学

(2)理工Ⅱ(数学・物理):基礎物理学、電磁気学、回路理論

(3)理工Ⅲ(化学):物理化学、有機化学、無機化学

(4)理工Ⅳ(生物):生物学一般、生物科学

(5)理工Ⅴ(情報):情報理論、計算機工学

(6)法律(弁理士の業務に関する法律):民法

上記の科目を見てわかるように、理系の科目が多いことからも、弁理士試験の合格者に

理系出身者が多い理由の一つと言えます。

行政書士と弁理士では、行政書士試験の合格率の方が4%ほど高いです。

行政書士試験の合格者は、40代の合格者が少ないのに対して、弁理士試験は、年齢も

20代~40代と幅広い年齢の合格者がいます。会社員として働いている人たちも多く

大半の人が理系の職種についている人たちです。

よって、たくさんの文系の人たちが取得する行政書士の試験よりも

社会人になってからの実務を活かし、コツコツ学べる弁理士試験の方が理系出身者に

おすすめであると言えるでしょう。

行政書士と弁理士の勉強時間

行政書士試験の勉強時間は、500時間~600時間と言われていますが、中には

1000時間以上を試験勉強に費やしている人もいます。その理由として上げられるのは

行政書士の試験科目である法律についての事前知識の有無、また実務経験の有無によって

勉強時間が大きくことなる点です。

では、行政書士の試験に比べて、弁理士試験の勉強時間はいかなるものか説明します。

弁理士の試験に合格するために必要な勉強時間は、3000時間と言われており

時間だけで見ると、行政書士よりも2500時間多いです。

弁理士の1日平均の勉強時間は平日が3時間で土日が8時間と言われていますが、正しい

勉強法で弁理士の試験に必要な範囲だけを勉強すれば、勉強時間は1500時間程度で合格が可能です。弁理士の試験を受ける人たちの多くは会社員ですから、働きながら勉強に時間を

費やすことは簡単なことではありません。

しかし、集中して効率よく勉強を進めていけば、勉強時間は1500時間程度ですみ

受験にかかるまでの時間を1年とし、1日4時間×365日を少しずつ積み重ねていけば

1460時間になり、働きながらでも1年で合格することが可能です。

行政書士試験の勉強時間最大で1000時間と言われていることに対し、弁理士試験の

勉強時間は、効率よく勉強を進めていけば、1460時間までに短くすることが出来るので

勉強時間の差はさほどないことがわかります。

行政書士と弁理士にある年収の違い

(1)行政書士の年収

行政書士の平均年収は600万円です。一般の働き手に比べると高い年収となっています。

年齢別での平均年収は、40代で670万円~800万円と最も多く、20代では

320万円~400万円です。

また、平均年収は体系によっても大きく異なります。

①独立している:200万円~2000万円

行政書士は、独立して成功させることがとても難しい職業の1つです。独立はしても

年収600万円には届かない行政書士が大多数を占めます。

②大手法人事務所の行政書士:208万円~1480万円

年収に大きな開きがありますが、行政書士は業務内容によって報酬が大きく変わります。

薬局解説許可業務では年収1480万円で、公益認定申告業務では、年収208万円です。

③個人事務所の行政書士:350万円~500万円

この他にも都道府県別の平均年収のデータも公表されており、東京都が840万円と最も

多く、1番低い平均年収であったのが沖縄県の480万円です。

東京都と沖縄県では360万円もの収入差が出ています。

以上のことから、平均年収600万円と謳われる行政書士の年収ですが必ずしも、この額が

もらえるというわけではなく、年収600万円よりも低い年収になってしまう可能性が

あることを押さえておくとよいでしょう。

(2)弁理士の年収

弁理士の平均年収は800万円です。

20歳~24歳の平均年収は433万円で、50歳~54歳の年収が912万円と

最も多い平均年収となります。

また、平均年収は就職する企業によって大きく異なります。

①独立して成功している:年収1000万円~3000万円

弁理士は、その絶対数が少ないことから大変重宝される職種であるため

成功する確率が高く、知財コンサルや経営コンサルに参加することもあり

幅広い収入が期待できます。

よって、年収1000万円から2000万円で独立成功と言えるでしょう。

②大手弁理士事務所、または大企業の企業内弁理士:年収881万円

先に独立を考える弁理士は、大規模な事務所や大手企業に就職する人が多い傾向にあります。

③中規模な弁理士事務所、または中企業内弁理士:年収729万円

④零細弁理士事務所、または小企業の企業内弁理士:年収661万円

この他にも都道府県別の平均年収のデータも公表されており、東京都が1064万円と

最も多く、1番低い平均年収であったのが沖縄県の608万円です。

東京都と沖縄県では456万円もの収入差がでています。

以上のことから、弁理士の年収と行政書士の年収では、圧倒的に弁理士の収入の方が多い

ことがわかります。そして、弁理士は歩合制を採用している特許事務所が多いことから、

年齢に関係なく経験や能力が給与に反映されるため、給与を増やすことが可能です。

特に、理系出身者の場合、得意分野を活かし他の弁理士よりも豊富な知識を

持ち合わせているので、特許事務所での実務経験が5年前後で年収1000万円が手の届く

範囲となります。弁理士は売上次第で報酬は青天井なので年収2000万円も

夢ではありません。

行政書士と弁理士の仕事内容の比較

(1)行政書士の業務内容

行政書士は行政手続を専門とする法律家で、その法廷業務は主に3種類の業務があります。

①書類作成業務

・国や地方公共団体、官公署に提出する書類の作成

(建設業許可、会社設立、帰化申請、風俗営業許可など)

・事実証明に関する書類の作成

(内容証明郵便、財務諸表、会計帳簿、風俗営業許可申請時に添付する店の配置図など)

・権利義務に関する書類の作成

(遺言書、遺産分割協議書、示談書、会社定款等の作成)

②許認可申請の代理

作成した書類を官公署へ提出する手続を、依頼主を代理して行う業務です。

③相談業務

顧客から依頼された書類作成について相談に応じ、相続手続に関する相談内容から

企業の経営、法務相談といった幅広いコンサルティング業務です。

また、業務内容別で見る行政書士の業務には下記の業務があげられます。

・遺言書や遺産分割協議書の相談から書類作成

・金銭消費貸借契約、賃貸権の契約書類の作成

・クーリングオフの手続き

・交通事故にかかる資料作成

・自動車の新規登録や移転登録、車庫証明などの運輸に関する手続き

・成年後見

上記のことからもわかるように、行政書士は我々の身近で起こりうる事柄への

サポートや、トラブル回避のサポートなどを行い、ビジネスにおいても必要不可欠な

業務を担っています。

(2)弁理士の業務内容

弁理士の代表的な業務は、知的財産権を取りたい人のために特許庁への手続きを

代理で行うことです。

弁理士の仕事を大きく分けると4種類の業務があります。

①産業財産権(特許・実用新案、意匠、商標)の取得

権利の取得、鑑定・判定・技術評価書の作成に関する業務を担当します。

これらはいずれも、弁理士の独占業務となります。

外国での産業財産権の取得のために、外国における拒絶理由通知に対する応答案を作成したり、応答案を基に外国の代理人に正式な書面の作成を依頼したりします。

②産業財産権の紛争解決

訴訟を始め、裁判外紛争解決の手続きなど、輸出差止めの業務となります。

③コンサルティング業務、契約支援

知財コンサルティング、契約書の作成・レビュー、契約の代行を行います。

④企業内弁理士の業務

最近では、大手企業を始め、中小企業に渡り企業内弁理士として活躍している弁理士が

増えています。企業内弁理士は、通常の弁理士とは違った角度からの業務内容となり

競合している他社の特許・技術の調査、発明者から出された考えの新規性の調査、

自社の出願手続き、特許戦略の立案など幅広い業務を行います。

①の仕事は技術者へのヒアリングが多くを占める業務で、技術者の発明について

十分に理解し、特許明細書を作成します。特許明細書は、技術者の説明や、背景技術、

技術の応用例などを記載する必要があり、技術者へのヒアリングが1回、稀に数回と

なる業務です。このヒアリングに関して理系出身者の場合、発明の基礎的なロジックを

理解しているため、スムーズに業務を行うことができるでしょう。

理系には弁理士がおすすめ!

当記事では、行政書士と弁理士の年収、業務内容、試験難易度などの違いを

解説させていただきました。

行政書士と、弁理士ともに国家資格であり、どちらも誇れる職種ですが

私は理系の人たちに、弁理士になることをおすすめします。

行政書士は、弁理士に比べて合格率は高いですが、一発で合格する確率は

7%未満です。弁理士の試験は、理系を専門とする試験科目も多く、試験勉強もスムーズに

行うことができ、一発で合格できる確率は10%以上と、弁理士の方が高いです。

また、平均年収を比べても200万円以上もの差がついていることもおすすめする理由の

1つです。行政書士は、国家試験に合格したにも関わらず、その年収は果たして努力に見合っているのかと考えると疑問が残ります。また、独立が難しく、事務所に所属している

行政書士に比べて年収が極端に低くなってしまう行政書士が多いことも不安要素です。

弁理士の場合は雇われ弁理士としても安定が望め、独立した後のことを考えても努力が報酬に結びつく数少ない業種であり、独立後も高収入の維持が期待できる仕事です。

そして、やはり行政書士には文系出身者が多く、弁理士には理系出身者が多いという

点を考えると、今持っている自分の知識や、経験したことを存分に発揮できるのは弁理士

という職業でしょう。

あなたが理系出身で、どちらの資格を取るか迷っているならば、是非この記事を参考に

していただければ幸いです。

理系出身弁理士のお仲間が増えることを願っています。

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