目次
弁理士とは?
弁理士とは、知的財産に関する専門家です。
特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの知的財産権を取りたい人の
代理で、特許庁への手続きをすることが主な弁理士の仕事になります。
また、知的財産の専門家として、知的財産権を取るための相談、自社製品を
模倣されたときの対策、他社の権利を侵害していないかの相談など
知的財産に関するアドバイスやコンサルティングをすることも、弁理士の仕事です。
さらに、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の侵害に対する訴訟に弁護士と
一緒に参加することもあります。
1.弁理士試験の傾向
弁理士の試験を受けるための条件はとくに設けられておらず
毎年行われていて、一次試験が5月、二次試験が7月、三次試験が10月にあります。
一次試験が短答式、二次試験が論文式、三次試験が口述式で
一次試験の合格者が二次試験に進み、二次試験の合格者が三次試験に
進むという形式です。
特許庁の発表しているデータによると、令和元年に弁理士の試験を受けた
人は3488名、合格者は284人で、合格率は8.1%でした。
過去のデータから比較すると、受験者は年々減少傾向にありますが
合格者はほぼ横ばいで、毎年7%から8%をいったりきたりしている状態です。
受験者は社会人が最も多く、年齢層は20代〜40代が多くの割合を占めています。
合格者のほとんどが数回の挑戦で合格していますが、1回の挑戦で合格する人は10%以上います。
2.弁理士試験の対策
弁理士の試験に合格するために必要な事は、「時間」「効率」「諦めない心」です。
弁理士の試験に挑む人の多くは社会人なので、ベースに仕事があって
その合間の時間を使って、勉強に取り組んでいるので、あなたの24時間を
効率よく使っていく必要があります。
弁理士の試験に合格するために必要な勉強時間は、3000時間と言われています。
しかし、正しい勉強方法で、弁理士試験に必要な範囲だけ勉強すれば、「1500時間」程度で合格可能です。膨大な時間に思える時間数も、1日4時間×365日をコツコツ積み重ねていけば1460時間になり、働きながらでも1年で合格することが可能です。現に、私は働きながら1年で合格しました。
時間を効率よく使い、諦めない心を持って取り組んでいきましょう。
3.弁理士試験の短答式試験
弁理士試験の一次試験は、短答式試験です。
短答式試験は5月中旬から5月下旬に行われ、合格発表は、6月下旬となります。
試験会場は主要都市である東京、大阪、仙台、名古屋、福岡で実施され
問題数は60問で、試験科目は特許法(10問)、実用新案法(10問)
意匠法(10問)、商標法(10問)、工場所有権に関する条約(10問)
著作権法(5問)、不正競争防止法(5問)の中から出題されます。
試験時間は3時間半、出題形式はマークシートに5肢択一式です。
短答式試験は、以前に比べて合格率が25%から10%に低下しています。
なぜなら、平成28年度の試験から、科目別に合格基準点が
設けられるようになりました。そのため、今までのようにあなたが得意とする
科目を強化する学習法ではなく、出題される全ての科目への対策が必要に
なったため、難易度が上がったと思われます。
短答式試験をパスするためには、総合得点(満点60点)に対して65%(39点)を
獲得し、かつ科目別合格基準点の4点を各科目で獲得すれば合格です。
特許庁が発表している令和元年の短答式試験の過去の問題を見ると
出題パターンがわかります。
①適切なもの(正しいもの)を選ぶ問題→23問
②不適切なもの(間違っているもの)を選ぶ問題→17問
③適切なもの(正しいもの)がいくつあるのか選ぶ問題→11問
④不適切なもの(間違っているもの)がいくつあるのか選ぶ問題→6問
⑤組み合わせを選ぶ問題(正しいもの、誤っているものの組み合わせ)→2問
⑥穴埋め問題→1問
過去の問題からわかるように、短答式試験では基礎的な知識の深い理解が問われます。
5択の答えを基本知識で求めるならば、いくつも正解があるように見えるので
問題から細かなポイントを導き出す、より深い知識を求められる問題ばかりです。
そして、受験者を苦しめる長文読解。
設問も長ければ、答えの選択肢5択も長文。
60問の長文読解、しかも、その問題が全て法に関するより繊細な知識を
必要としますから、試験時間が3時間半もあることは頷けます。
短答式試験には3つの免除制度があります。
①短答式試験の合格者は、合格発表日から2年間、短答式試験が免除となる。
②工業所有権に関する科目の単位を取って、大学院を修了した者は、大学院の
課程修了日から工場所有権に関する法令や条例の試験科目が免除となる。
③特許庁で、審判または審査の事務として5年以上働いた者は、工場所有権に
関する法令や条例の試験科目が免除となる。
②と③は、あくまで少数なのであえて触れませんが、注目すべきは①です。
短答式試験の受かった後に控える、第二次試験の論文式試験をその年に落として
しまったとしても、後の2年間の短答式試験をパスして、二次試験の論文式試験から
受験する事ができるのです。
短答式試験の2年間免除は受験者にとって、とても大きなメリットです。
但し、心構えとしては、最初から2年間の免除をあてにするのではなく、
1回で合格する気持ちで受験することによって、
運悪く、その年の論文試験に不合格になったとしなくても、
翌年には確実に合格することができるのです。
効率の良い勉強方法としてやはり着目すべきは、科目別の合格基準点です。
過去2年間の短答式試験の各問題の正解率を見ると、受験者の半分以上が
正解している問題を正答すれば、ほぼ科目別の合格基準点を満たしています。
ということは、60問ある問題の中から比較的、基本知識に近い問題を全て
正解することができれば、短答式試験の合格の道は見えてくるということです。
また、「正しい」知識を意識して勉強をし、その選択肢はなぜ「間違い」なのかの理由づけを意識していくと短答式試験は解きやすくなると思います。
4.弁理士試験の論文式試験
弁理士で試験の二次試験は、論文式試験です。
論文式試験は、弁理士試験の中で最も難関だと言われています。
試験会場は、必須科目と選択科目共に東京と大阪の2ヵ所となるので
前日から泊りがけで試験に挑む人も多いです。
合格率は30%で、論文式試験を受けるためには一次試験の短答式試験に
合格している必要があります。
論文式試験の合格率は、過去のデータから比較してもさほど変わりはありません。
受験者の4人に1人が受かる試験です。
論文式試験をパスするためには、「書く訓練」をたくさんするということです。
口では説明できることでも、いざ論文にして書き起こすとなると
難易度がぐっと高くなります。
論文式試験は、弁理士の仕事をする上で必ず必要となる、ベースの法律の理解
判断、論ずる思考、文章の表現を問われ、試験科目は、必須科目と選択科目の
2種類があるため、日を分けて実施されます。
(1)必須科目
論文式試験の必須科目は6月下旬から7月上旬に行われ、合格発表は、9月中旬です。工業所有権に関する問題で、科目は特許法、実用新案法、意匠法、商標法から出題され
特許法と実用新案法が2時間、意匠法と商標法がそれぞれ1時間半の試験時間となります。
短答式試験とは違って、工場所有権に関する条約、著作権法、不正競争防止法からは
出題されません。
論文式試験の必須科目の試験時間はトータル5時間ですから
5時間の間、長文をひたすら書かなくてはならないので、日頃から「書く訓練」を
して、来たる論文式試験に備えることが懸命です。
設問に対しての答えを頭で構成しながら論文を、ひたすら書いていくということは
とても疲れますよね。
論文式試験の必須科目に向けて、日頃から体調管理に気をつけ
万全の体調で必須科目に挑戦することをおすすめします。
論文式試験の必須科目では、特許法と実用新案法の配点が、意匠法と商標法の
2倍です。
ですので、効率の良い勉強法としては、全てを学習することはもちろん必要ですが
よりたくさんの時間を特許法と実用新案法に割り振った方がよいでしょう。
特許法は全ての科目において、ベースになることが多いので応用の
きくことが多いです。
また、論文式試験の必須科目では、弁理士試験用法文集が
貸し出されます。
法文集が貸し出される理由として、2種類の考えが思い浮かぶと思います。
①法文集が貸し出されるなんて、それをベースに論文を書いていけば
苦労することなく、論文を書き上げられる!
②法文集が貸し出されるということは、それほどまでに難しい試験ということか。
答えは、後者の②です。
法文集を貸し出されたとしても、合格率は30%です。
法文集もあるのに、7割近くの人は落ちてしまう、いかに論文式試験の必須科目が
難しいかということがわかると思います。
しかし、法文集ということは、必ず法文集の中に役に立つポイントが
あるということです。
論文式試験の必須科目をパスするためには、法文集を最大限に利用して
論文を書き上げるということを心がけて、必須科目に挑みましょう。
そして、論文式試験の必須科目にも、短答式試験と同じように免除制度があります。
①必須科目の合格者は、合格発表日から2年間、必須科目が免除となる。
②特許庁で、審判または審査の事務として5年以上働いた者は
必須科目が免除となる。
②は短答式試験の免除制度と同じく、少数なのであえて触れませんが
①のように、論文式試験の必須科目に合格した人は、合格発表日から2年間
論文式試験の必須科目をパスすることができるので、受験者にとって大きな
メリットです。
(2)選択科目
論文式試験の選択科目は7月中旬から7月下旬に行われ、合格発表は、9月下旬です。
選択科目の試験は、7月中旬から7月下旬に行われますが、願書を提出するときに
選択する必要があります。
後からの変更が出来ないので注意しましょう。
試験科目は、理工Ⅰから理工Ⅴ、弁理士の仕事に関する法律の中から
1つ選ぶという形式になります。
理工Ⅰ(機械、応用力学)→材料力学、流体力学、熱力学、土質工学
理工Ⅱ(数学、物理)→基礎物理学、電磁気学、回路理論
理工Ⅲ(化学)→物理化学、有機化学、無機化学
理工Ⅳ(生物)→生物学一般、生物科学
理工Ⅴ(情報)→情報理論、計算機工学
法律(弁理士の仕事に関わる法律)→民法(総則、物件、債権)
論文式試験の選択科目は、理工系が5科目、法律が1科目です。
弁理士の資格を持つ人たちに、理系出身者が多い理由は
弁理士の試験を受ける前から、この理工系の専門知識のベースを
習得していたことが考えられます。
この選択科目を見たあなたも、これならいける!という科目が
あったのではないでしょうか。
論文式試験の選択科目では、自分の得意な分野の科目を選択した方がよいでしょう。また、年によって難易度のばらつきが少ない科目がおすすめです。
例えば、あなたが理系出身で専攻が熱力学の場合、理工Iの熱力学を選択するとよいでしょう。年によって難易度のばらつきが少ないのがおすすめの理由です。
まずは、過去問でしっかりと対策しましょう。過去問で理解が足りていない点のみ、教材で知識を補充しましょう。
教材がすぐに用意できない場合は、探す時間が無駄になるので
インターネットを使って自分に合ったものを見つけましょう。
効率の良い時間の使い方が、合格への鍵です。
論文式試験の選択科目の試験時間は、1時間半です。
一般的に人間が集中できる限界の時間が1時間半と言われています。
ですが、誰しもが一時間半みっちり集中できるかといえば
わたしは、とても難しいことではないかと思っています。
ここはあなたの得意分野の勝負どころです。
日頃から、勉強時間の一部を得意分野の復習に充てて、過去に習ったことを
呼び起こしておけば、本番で数問解き終わった時に、一息つけるぐらいの
余裕が出てくると思います。
一時間半を全集中ではなく、一息つけるぐらいの余裕があれば
緊張感もほぐれ、あなたの本来の実力を存分に発揮することができるはずです。
そして、短答式試験、論文式試験の必須科目の試験と同じように、論文式試験の
選択科目試験にも、免除制度があります。
以下(1)~(3)のいずれかに該当する方は、論文式筆記試験選択科目が永久に免除になります。
(1)選択科目の合格者。
(2)修士・博士・専門職学位に基づく選択科目免除資格認定を受けた方
(3)特許庁が指定する下記の公的資格を有する方
技術士であって、別表1に記載する技術士試験の選択科目に合格
した者
一級建築士
第一種電気主任技術者免状又は第二種電気主任技術者免状の交付
を受けている者
薬剤師
電気通信主任技術者資格者証の交付を受けている者
情報処理安全確保支援士試験の合格証書の交付を受けている者
情報処理技術者試験合格証書の交付を受けている者で、別表2に
記載する試験区分に合格した者
司法試験に合格した者
司法書士
行政書士
5.弁理士試験の口述試験
弁理士試験の最終試験は、口述試験です。
弁理士試験の口述試験は、10月中旬から10月下旬に行われ
合格発表は、10月下旬です。
試験会場は、東京の1ヵ所となります。
地方から泊りがけで来る受験者も多く見受けられるので、日頃から体調管理には
十分気をつけて、試験に望むことが大切です。
さて、口述試験ですが、なんと合格率は90%以上を誇ります。
これはものすごく高い合格率ですよね。
10人受けたら9人、100人受けたら90人が受かる計算になります。
つまり、口述試験までたどり着くことができれば、ほぼほぼ合格ということです!
ここまでたどり着いたあなたは、もうすぐそこまで弁理士の道が見えています。
口述試験をみすえて、日頃から口頭で「説明をする」ということを意識して
勉強に取り組みましょう。
弁理士試験の口述試験は、論文式試験の選択科目の試験が終わってから
約3ヶ月の猶予があるので、ここから面接の練習をしても、本番には十分
間に合います。
論文試験の選択科目の試験が終わったら、合否を気にかけることなく口述試験の
勉強に時間を費やすべきです。
弁理士試験の口述試験は、特許法、実用新案法、意匠法、商標法から出題されます。
論文試験と同じく、工場所有権に関する条約、著作権法、不正競争防止法からは
出題されません。
口述試験の試験時間は、特許法と実用新案法10分、実用新案法10分
商標法10分の合計30分の試験で、合格基準はABC判定で行われ
Cが理解不十分とされる判定です。
口述試験では、7分を切るとベルが一度鳴ります。
そのベルを目安に、10分の時間をうまく使いこなしていきましょう。
3回の面接のうち、Cを1つまでに留めることが出来れば合格となります。
弁理士試験の口述試験は、面接方式で行われます。
特許法と実用新案法、意匠法、商標法の3つに会場が区切られていて
順番を待つ受験者たちは、廊下で待機します。
弁理士試験の口述試験では、論文式試験の必須科目のときと同じように
弁理士試験用法文集が貸し出されます。
相手は面接官であり、対、人ですから大前提のマナーとして
使う際には、一言断りを入れてから使うようにすることをおすすめします。
口述を成功させることはもちろんのこと、人柄も見られていることを
忘れないようにしましょう。
弁理士試験の口述試験は、専門知識をもちながらコミュニケーション能力を
見られる試験ですので、質問に対して簡潔に、肉付けはせずに答えましょう。
緊張していますから、多少の無言時間は有りですが、ずっと黙り込んで
しまうのは避けましょう。
面接官も過去には、あなたのように弁理士試験を受けてきた時代があり、同士です。
ちょっと先にたどり着いた仲間だと考えて、緊張をほぐして黙り込む時間を
減らすように心がければ、合格に近づくでしょう。
最後に
弁理士の試験は、効率的な勉強方法で弁理士試験に必要な範囲だけ勉強すれば、働きながら1年で合格できる試験です。
自分なりの効率のよい時間の使い方を見つけ、効率的な勉強方法を身につけて、あきらめずにコツコツと勉学に励んでいきましょう。