知的財産権に関する業務を専門で行う弁理士。
そんな弁理士は、資格を得るための試験の難易度が高いと言われています。
平成30年度の合格率は7.2%になりますが、士業の中でも人気が高く士業の人気ランキングでは3位という結果が出ています。
では、多くの人が目指す弁理士にはどのような魅力があるのでしょうか。
まずは、弁理士の魅力について解説していきますので見ていきましょう。
目次
弁理士の魅力1「誰でも資格を取れる」
国家試験の中には、年齢や学歴などの受験資格を設けているのがありますが、弁理士は受験に関する条件はありません。そのため、目指しやすい資格の一つとなり士業の中の人気も上位に入っていると言えるでしょう。
また、性別も問わずに受験する事ができる弁理士は女性の受験者が多い資格の一つになり、先述した平成30年度の合格率でも大半を女性が占めています。
その中でも、弁理士の仕事に合格した人の大半が特許事務所などで仕事をする人が多いです。これは、特に文系の方になりますが、特許事務所などでの仕事で技術的にも専門家として力量を要求されにくいのが理由とされています。
弁理士の試験の特徴
ここで、弁理士の試験について触れていきます。
弁理士の試験には「短答式試験」「論文式試験」「口述試験」の3種類があります。
短答試験はマークシートになり、特許法や商標法、工業所有権などの法律に関する問題が多いです。65%の点数をとる事ができたら通過する事ができるのですが、合格率が低い時は10%を切ってしまう結果が出ていました。
論文式試験は、必須科目と選択科目のどちらかを選ぶ事ができるようになっていて、論文式試験の合格率は高く25%前後の方が合格しています。こちらは、いかに正しく理解して説明できるかが大事な要素になりますので気を付けましょう。
最後に口述試験になりますが、試験管2名と対面で受ける試験になります。短答試験や論文式試験に合格しているので、内容は難しくありません。質問の内容に対して、はっきりと答えるようにするのがポイントです。
弁理士の魅力2「最先端の技術に関われる」
理系の最高峰と言われている弁理士。そんな理系には最も嬉しい内容の一つとして、世間に発表される前の技術などに触れる事ができるのが魅力の一つになります。新しい技術を使ってものを作成していくプロセスをはじめとして、専門的にサポートをする事ができるのは弁理士だけになります。
また、触れる事ができる技術の範囲も幅広いのが弁理士の特徴になり、化学やバイオテクノロジーをはじめとして多くの技術に触れる機会があります。ですが、弁理士は技術者ではありません。最先端の技術に触れてサポートする事になりますが、技術者のように提案する事が仕事では無いのを常に念頭に置いて注意するようにしましょう。
弁理士の魅力3「語学力を生かしてキャリアアップ」
グローバル化している事で、多くのビジネスでは語学力を求める企業も多いです。そして、企業がグローバル化していく中では弁理士も語学力が求められてしまいます。
そもそも弁理士の専門である知的財産権に関しては、国で権利を取得しなくてはいけないという決まりがあります。そのため、日本の企業が海外に進出している場合は進出している外国で権利を取得し、逆に海外から日本に進出している企業の場合は日本で権利を取得しなくてはいけません。
これらの業務を弁理士として請け負うには語学力は必須になりますので、身についている方は活かすことができますので実績やキャリアアップにも繋がります。また、語学力は仕事をしながらでも身につけていくことができる内容でもありますので、勉強してキャリアアップをはかることもできます。
弁理士としての働き方とは
弁理士には3通りの働き方がありますが、どのような働き方をするかで収入面でも違いがあります。どのような、働き方を選ぶかも含めて弁理士としての第一歩になりますので、3通りの働き方をそれぞれしっかり見て覚えていきましょう。
特許事務所での働き方
弁理士としての働き方として、一番選ばれるのが特許事務所での勤務になります。資格を取ったばかりの時には、仕事の流れなどが何もわからない状態になってしまいますので、一度特許事務所で働き経験を積んでいくのがおすすめです。また、独立をしていこうと考えている人も初めは特許事務所に勤めて要領やコツ、仕事の流れを勉強していきます。
多くの経験を積んでいくことは個人の収入だけではなくスキルアップに繋がっていきますし、特許事務所でもボーナス制度がある事務所が多いので事務所によってはとても働きやすい環境になりますし、特許事務所では経験年数よりも能力を優先してくれる傾向がありますので頑張りがいがあるでしょう。
企業の弁理士としての働き方
企業の中には知財部という部署がありますが、弁理士の資格を持っているということでこちらを選ぶ人もいます。ですが、企業の知財部で働く場合には弁理士の資格を持っていても他のサラリーマンと同じ扱いになります。特別優遇している企業はありませんので、年収も他のサラリーマンと大差がありません。
ですが、弁理士の資格を持っているということで手当を出している企業はありますので、企業で働く場合には手当が付く企業がおすすめになります。また、働く企業で昇進した場合には弁理士の資格が役に立つ場合もありますが、こちらも企業によって変わってくる内容と言えるでしょう。
弁理士として独立する働き方
特許事務所で独立資金を稼ぎながら仕事の流れややり方、実績を積んでいき独立をする人も多いです。自身の特許事務所を構えて独立することを、弁理士の資格を取る段階から視野に入れている方も多いので、実際に仕事をしながら視野に入れて考えてみるのも良いでしょう。
独立は大変と言われていますが、成功した人では小規模の事務所から大規模の事務所になった人もいますので不可能なことではありません。独立で重要なのは、どれだけ営業できるかになりますので、独立を考えている場合には営業も視野に入れましょう。
弁理士が行う仕事内容とは
技術者に対するサポートをしていくのが弁理士になりますが、弁理士としてできる範囲がどれくらいあるのかはご存知でしょうか。知的財産として、特許に関する業務は知られていますが、その中でも弁理士が果たす役割は細かく分けることができます。
そこで、実際に弁理士の仕事に合格した場合には「どのような仕事を行っていくのか」という疑問に答えていきたいと思います。
弁理士の仕事は大きく分けると3つに分類され、「知的財産権の取得」「知的財産権に関する紛争解決」「コンサルティングや取引関連」になります。
法律の専門家でもある弁理士だからこその仕事内容もありますので、どの仕事内容もやりがいのある内容と言えるでしょう。それぞれの仕事内容について個別にまとめましたので、まずはどのような仕事内容なのかを見ていきましょう。
知的財産権の取得に関する業務全般
知的財産には色々あり、特許や意匠、商標、実用新案など色々な種類があります。これらを、技術者の権利とするには専門的な知識はもちろんですが、労力がかかることでもあり大変複雑な内容になっています。
たとえば、意匠や商標の場合には「先に登録されている意匠と類似していてはいけない」などの細かい規定が設けられていますので、申請する意匠が似ている登録意匠が無いかも弁理士が事前に調べなければいけません。このように、厳しい条件をクリアすることで認められる権利になります。特許権が認められるには、その発明について、その分野の通常の知識を有する者が容易に想到できないものであることが必要になります。これは、技術者が申請した内容を権利として認めるに値するものかどうかをしっかり見極め、紛争を回避するためと言えるでしょう。
このような、さまざまな条件をクリアするために必要な書類を作成したりすることで技術者が権利を得るために動くのが、弁理士の大きな仕事内容の一つになります。また、特許権などの侵害が疑わる製品について侵害の有無を鑑定する鑑定書などの作成も弁理士が手がける仕事内容となっています。
これらの知的財産権の取得に関して行う業務は、弁理士しか行うことができませんので独占業務となっています。
知的財産権に関する紛争解決業務内容
権利として主張することができる知的財産には、紛争問題が多くあります。無断で使用されてしまう場合もありますし、他人の知的財産を侵害してしまう場合もあり、人と人がいる以上トラブルはつきものになります。
昨今は、ネット社会が進み色々な情報だけではなく写真も利用されていますが、雑誌などの内容を許可なく無断で記載してしまうのは著作権侵害として知的財産権を侵害する行為に当たってしまいます。このように、自分自身では権利を侵害するつもりがなくても他人の権利を侵害してしまうケースは実際に起こっている内容です。
これらに対しての紛争解決は弁護士の仕事と思われていますが、知的財産権に関する紛争に関しては弁理士も行うことが多い仕事内容になります。
紛争解決方法では裁判になる場合もありますが、裁判外で紛争解決を処理することがあり、その場合、厳密に法をあてはめて解決する必要がなく柔軟に紛争を解決することができます。また、双方の当事者同士での話し合いで問題が解決するパターンもありますので、知的財産権に関する紛争も色々な内容になると言えるでしょう。
先述したように、語学力が長けている場合には海外企業における知的財産権の紛争解決に着手することもありますので、弁理士として国際的な活躍をすることもできます。
コンサルティング業務、契約支援,
最後に紹介していく弁理士の仕事内容になりますが、知財コンサルティング、契約書の作成・レビュー、契約の代行などがあります。弁理士とコンサルティング業務の結びつきを不思議に感じてしまう人もいるのではないでしょうか。
弁理士が行うコンサルティング業務は経営コンサルティングとの線引きは難しいのですが、あくまで知的財産を生かして行うコンサルティング業務になります。実際に企業が持っている知的財産を活かして、企業を大きくするための契約や取引なども行う仕事内容になっています。
もちろん、こちらのコンサルティング業務を行う場合には経営コンサルティングとしての知識もある程度は持っていないといけなくなりますので、弁理士としてすぐに行うことができる内容にはなりません。また、知財コンサルティングとして独自に名乗っている方もいるので、より厳しい状況になっている内容とも言えるでしょう。
弁理士の年収とは
さて、ここまで弁理士の仕事内容などについて触れてきましたが、弁理士を目指す上で気になるのが年収です。一般的に弁理士の平均年収は700万円から800万円と言われていますが、弁理士の給料は歩合制の体系を採用している特許事務所がほとんどになります。そのため、所属している特許事務所の案件獲得量や個人の請け負う仕事量でも変わってしまうので年収は大幅にアップさせる事もできるようになります。
歩合制を採用している特許事務所で勤務し特許弁理士として仕事をした場合には、年収は売上の3割から4割程度ですから、請け負う仕事量では1000万を超える年収を得る事が可能になります。ですが、実務能力が反映されない給与体制の特許事務所の場合には、年収は500万から600万程度になってしまいます。
これに対して商標、意匠弁理士の場合には、特許事務所内でも人数が少ないので、請け負う仕事量が多い事から800万から1500万の年収を得る事ができるようになります。ここで、弁理士の他に弁護士の資格も有している場合には、紛争問題にも強い人材になりますので2000万近い年収を手にする事も可能です。
外国案件を担当する弁理士の場合、年収は500万から1000万が平均になりますが、特許翻訳をする事ができるのであれば1500万ほどの年収を得る事が可能になります。ですが、外国案件を担当する弁理士は、特許事務所により請け負う仕事量が違いますので注意しましょう。
また、弁理士は理系の最高峰と言われていることもありエンジニア出身者が弁理士に転職するケースも増えていますが、エンジニア出身者の場合も経験してきた事を活かす事ができますので年収は5年以内の間には1000万以上得る事が可能です。また、特許明細書を作成する事ができるのであれば、さらに年収アップが可能になります。
このように、特許事務所内でも弁理士として担当するポジションでも年収は変わってきますので、年収の幅は広くなると言えます。また、経験年数によって実績も増えていき、できる仕事量も増えていきますので、実質的な売上が5000万以上にする事も可能になります。これは、1500万から2000万ほどの年収になりますので、個人で請け負う仕事量や頑張り次第で大幅に年収をアップさせる事も可能です。
弁理士として独立した時の年収
弁理士としての独立も視野に入れている方がいると思います。弁理士の独立も一長一短ではありませんが、成功した場合には1000万から3000万の年収を得る事が可能です。これは、事務所の立地や規模、事務所で行う業務によって大幅に変わってきてしまいます。経費を抑えようと自宅兼事務所にした場合には、規模の小さい事務所になってしまいますので年収は少なくなる傾向があります。
また、顧客を得るために費やす期間は4年から6年はかかると言われていますので、年収をアップさせる事ができるのは、ある程度年数が経ってからと言えるでしょう。特許事務所で勤務していた時の人脈を利用した場合でも、軌道に乗るまでは2年ほどかかるとされています。
弁理士のメリットとデメリットとは
1つの事柄に対してメリットとデメリットが存在するのですが、自分にとってメリットの無い場合には手を出したいと思わないものですし、メリットとデメリットを比較して考える部分を持っています。そんなメリットやデメリットが弁理士にもあるのですが、多くの人が資格を得て弁理士として特許事務所で働いたり独立をしたりした場合に、どのようなメリットやデメリットがあるのかを紹介していきます。
特許事務所で働く弁理士のメリット「人間関係」
転職をする人の一番の理由でもある人間関係は、企業で働く以上付いて回るものになります。弁理士もクライアントとの人間関係は大事な要素になりますが、所内での人間関係に悩むことが無いと言われています。初めのうちは先輩が指導してくれるので付き合いがありますが、慣れてきたら自己で仕事は完結しますので人間関係で悩まなくて済むからと言えるでしょう。もちろん、働く特許事務所にはよってしまいますが、人間関係で悩むことが無いのはメリットの一つになります。
特許事務所で働く弁理士のメリット「自由な働き方」
弁理士には女性も多いのですが、在宅制度を採用している特許事務所も一部あります。そのため、育児や家事をしながら仕事をすることができるようになっているのもメリットと言えます。また、フレックスタイム制を採用している特許事務所も多いので、自身にあった自由な働き方ができるようになります。朝の満員電車が苦手な人は時間をづらすこともできますし、予定がある日は時間を合わせて仕事をすることができるようになりますので、この点が人気の要素の一つとなっています。
特許事務所で働く弁理士のメリット「頑張りが反映される」
先述したように、特許事務所では歩合制を採用している所が多いです。そのため、自分の頑張りは給与に反映されるので、頑張って仕事を覚えて案件をこなしていけば給与が上がっていきます。目に見える形で結果を知ることができるのは、次の活力にも繋がっていきますのでメリットの一つと言えるでしょう。
特許事務所で働く弁理士のデメリット「勉強」
難しい試験を突破して弁理士になっても、日々勉強が必要になります。これは、技術が日々進化していることから、常に最新の技術については理解しておかなくてはいけないという事になります。技術だけでなく、法律が改正された場合にも勉強しておかなくてはいけなくなります。また、年収をアップさせるためには自身のスキルアップは必要な要素になってきますので、特許事務所で働いても勉強をしていないといけません。ですから、勉強が苦手な人にとってはデメリットの一つになります。
弁理士が独立したときのメリット「得意分野で仕事ができる」
特許事務所で勤務した場合には、自分の得意分野の仕事だけができるわけではありません。ですが、独立した場合には自分の得意分野の専門の特許事務所にすることも可能になりますので、宣伝も得意分野に絞り多くの得意な案件を得ることができるようになります。これは、独立した弁理士の特権とも言えますので、苦手な分野がある弁理士にはメリットになります。
弁理士が独立したときのメリット「自由」
フレックスタイム制度で自由がある特許事務所もありますが、独立した場合には時間だけではなく仕事の量や場所も自分で決めることができます。収入面は仕事量によって変動しますが、ライフスタイルに合わせて仕事をすることができるようになりますし、特許事務所に勤務するように場所が決まっていないので、自分にとって都合が良い場所を選ぶことも可能になります。
弁理士が独立したときのデメリット「顧客獲得」
弁理士として‘独立した時に一番大変なのが、顧客獲得になります。特許事務所に勤務している場合には、事務所が仕事を回してくれますので待っていても仕事は入ってきますが、独立した場合には自分で動いて顧客を得ないといけません。特に、営業経験がない場合には弁理士として独立した場合に一番大変と言われていますので、顧客を得るまでの期間は長くかかってしまうと考えられます。
また、顧客獲得は収入面にも影響を及ぼしていく要素になってきます。成功をしたら高収入を得ることができる弁理士の独立になりますが、顧客が取れるまでは収入が安定しないという要素もあります。広告宣伝にも費用はかかってきてしまいますので、軌道に乗るまではマイナスになる場合もあります。
まとめ
特許と一言で言っても、種類はたくさんあり弁理士としての仕事内容は色々あります。その中で、収入が大幅に変動するのも弁理士の給与が歩合制の特許事務所が多いからと言えるでしょう。
特に、独立に成功した場合には年収が3000万に届くことも可能になりますので、高収入を狙うことが可能になります。独立でなく、特許事務所で働いた場合にも個人の実績や実力が給与に反映されますので、年収1000万も手が届く範囲になります。もちろん、高収入を目指すためにはスキルアップや実績は必要な要素になりますので、向上思考の方には特に向いていると言えるでしょう。
また、弁理士の試験のそれほど難しくないので、高収入を狙う場合には弁理士の資格を取ってみてください。